2027年度に始まる「GX ZEH住宅」とは?
住宅性能が年々高まる中、2027年度から新たな指標として登場するのが「GX ZEH(グリーン・トランスフォーメーショZEH)住宅」です。
地球温暖化対策やエネルギー問題に関心が高まるなか、国(経産省・エネ庁)が次の標準として定義する「GX ZEH住宅」。
「ZEHがさらに進化したもの」「光熱費が安くて、地震や停電にも強い家」などと話題になっていますが、実際のところ何が変わるのか気になる方も多いはず。
「今のZEHと何が違うのか」「初期費用はどれくらい増えるのか」「それでも選ぶ価値があるのか」をお話します。
従来のZEH住宅とGX ZEH住宅の違い
ZEHは
- 断熱性能を上げる(断熱等級5レベル)
- 省エネ設備を入れる(高効率エアコン・給湯器・照明など)
- 太陽光発電などでエネルギーをつくる
この3つを組み合わせて、「年間のエネルギー収支を“ほぼゼロ”に近づける家」を目指した住宅です。
GX ZEHは
「ZEHをさらに強化した次世代版ZEH」です。
国のカーボンニュートラル方針に合わせて、「省エネ」と「創エネ」をもっと高いレベルでやりましょうという考え方です。
- 断熱性能:さらに一段階上の性能(断熱等級6クラスを想定)
- 省エネ:一次エネルギー消費をより大きく削減
- 太陽光+蓄電池+HEMS+V2Hなどを前提に検討
- 目標:エネルギー収支ゼロを超えて ⇒ CO₂排出を実質的にマイナス方向へ
つまり、「太陽光の発電量だけでなく、エネルギーを自給・蓄電し、エネルギーをコントロールする家」が基準になります。
GX ZEHで“ほぼ必須”になってくる設備
ZEHは
太陽光発電は必須でしたが、蓄電池やHEMS(エネルギー管理装置)はあれば理想的レベルで必須ではありませんでした。
GX ZEHは
・高度エネルギーマネジメント(HEMS等)
・5kWh以上の蓄電池(太陽光を載せる場合)
が原則必須要件に変わります。
また、推奨される設備として
・[推奨]V2H(車と家の電気のやり取り)
EV(電気自動車)から家へ電気を供給、また、停電時の巨大バッテリーとして使える設備
気になるポイント GX ZEHの初期費用
GX ZEHになると、従来ZEHに比べて主に次の項目でコストアップが発生します。
・太陽光発電
→ 数kW〜10kW程度を載せると +100〜150万円前後(本体・工事費)
※太陽光発電は従来ZEHも必須設備
・HEMS
→ +10〜30万円(本体・スマート分電盤・工事費)
・蓄電池
→ 容量にもよるが +120〜200万円前後(本体・工事費)
・V2H機器
→ +30〜60万円前後
・断熱・サッシ性能強化分(断熱材の厚みUP、高性能サッシ など)
→ グレードによって追加コストが必要(実際の金額は、建物の大きさ・プラン・メーカーによって大きく変わります。)
一方で、GX ZEHは国のGX(グリーントランスフォーメーション)戦略の一環として位置づけられており、補助金や住宅ローン優遇の対象として想定されます。
高性能住宅ほど、
- 国の補助金
- 自治体の補助金
- 税制優遇(住宅ローン控除・固定資産税軽減 等)
の対象になりやすい傾向があります。
また、月々の支払いを考えると
- 住宅ローン → GX ZEHはUP
- 熱費 → GX ZEHで大きくDOWN
- 将来の電気料金の値上がりリスクに備えられる
これらを合わせて20〜30年スパンで見ると、GX ZEHの方がトータルで見ると安くなる可能性が高いという状況も十分考えられます。
GX ZEH住宅を検討する“メリット大”な理由
光熱費が安定しやすい
- 高断熱+省エネ設備+太陽光+蓄電池の組み合わせで、「買う電気」自体を減らせる
- 将来の電気料金値上がりに対して、自家消費の比率を上げられる
災害・停電に強い「電気の備え」になる
- 5kWhクラスの蓄電池が標準になることで、停電しても冷蔵庫・照明・スマホ充電など、最低限の生活インフラを数日程度維持できる可能性が高まる。
- 太陽光+蓄電池+HEMSの組み合わせで、停電時も「どこまで電気を使うか」を賢くコントロールできる
GX ZEH住宅がつくる未来像
GX ZEH 住宅の本質は
これらを備えた住宅単位の小さなエネルギー拠点化です。
- 太陽光発電(創エネ)
- 高断熱化(省エネ)
- 蓄電池(蓄エネ)
- DR/VPP(電力調整への参加)
国(経産省・エネ庁)は、GX ZEH/GX ZEH-M が増えることで、地域全体を「小さな発電所+蓄電所」の集合体として機能させ、地域全体のエネルギー循環が成立し、電力の安定供給・脱炭素化・災害レジリエンスを強化する未来像を明確に描いています。
- 地域は“電力を消費するだけ”ではなく
- “発電し、蓄え、調整し、地域で循環する”社会基盤になる
これが国が描いている、住宅がエネルギー政策に直接関わる時代の全体像です。
