アスベスト調査の義務化まとめ
今年、2023年10月1日着工物件より、解体・改修作業を行う際は資格者等による事前調査の実施が義務付けられます。
わたしも先月にやっと「一般建築物石綿含有建材調査者」講習を受講してきましたが、正直言って、私の今のアスベストに関する正しい知識のほとんどはこの講習で学んだ内容となったぐらい大事な講習でした。
つまり、この講習を受けないまま、アスベスト調査を行えば、間違った知識で間違った調査を行って、多くのアスベストを見逃した報告書を作成することになっていたと思います。
義務であるアスベスト調査には、実施するための知識が絶対に必要であると思います。
この義務化は、数十年先の多くの建設作業者の命を守るための重要な法律だと思いましたので、制度について、あらためてまとめてみました。
【制度の概要】
1)改修作業や解体の元請業者は、用途や規模の大小にかかわらず、アスベスト含有の有無の事前調査を行わなければなりません。
2)アスベスト事前調査は、建築物石綿含有建材調査者などの資格者が行わなければなりません。
3)その報告書は、一定規模の改修作業・解体の場合、労働基準監督署に報告しなければなりません。
【アスベストと建設業】
有害物質の代名詞の一つ「アスベスト」
実は高度成長期、このアスベスト(石綿)は「夢の繊維」「奇跡の素材」と呼ばれ、様々な耐性を持ちつつ、容易な加工性や低コストな素材であることから、身の回りの様々な製品に混入して利用されてきました。もっとさかのぼると、5000年以上も前にはミイラを包む布やランプの芯にも使われていたそうです。
アスベストをプラスチックやセメント、石膏に混ぜると、その素材にもアスベストがもつ耐火性や耐久性、強度の特性を持たせることができることから、アスベスト使用量の約8割は建材製品に使用されていました。
図:アスベスト含有建材の使用部位例 国土交通省「目で見るアスベスト建材(第2版)」2008.3
【アスベスト調査の目的】
アスベスト(石綿)を吸引することによって、肺がん等の命に係わる健康被害を引き起こすことがわかっていて、長い潜伏期間を経て発症する特徴があります。肺がんの発症までに15~40年、中皮腫は20~50年の潜伏期間といわれています。
2012年4月以前までは、現在の基準以上の含有量のアスベスト混入建材が製造されていて、その建材に含まれているアスベストが解体や切断時などに飛散してしまいます。作業者とその建物を使用する者の健康被害を予防することが、アスベスト調査の目的です。
その健康被害を予防する義務が、元請業者に課せられています。
【調査・調査方法・報告の義務】
1)調査の義務:改修作業や解体の元請業者は、必ず事前にアスベスト調査を行わなければなりません。調査対象の建築物は、大小の規模にかかわらず、一戸建て住宅も含めた内装工事や外装工事、浴室やキッチンのリフォームなど、いま行われる解体が伴う作業のほとんどは事前調査が必要です。(大気汚染防止法第18条の15第1項)
2)調査方法の義務:今年の10月1日着工物件からは、講習の受講者しかアスベスト調査ができなくなります。わたしも先月にやっと「一般建築物石綿含有建材調査者」講習を受講してきましたが、正直言って、私の今のアスベストに関する正しい知識のほとんどはこの講習で学んだ内容です。つまり、この講習を受けないまま、アスベスト調査を行えば、間違った知識で間違った調査を行って、多くのアスベストを見逃した報告書を作成することになっていたと思います。アスベスト調査には、実施するための知識が絶対に必要です。この義務化は、数十年先の多くの建設作業者の命を守るための重要な法律だと思いました。(石綿障害予防規則第3条第4項)
県内の講習のお知らせ:(一社)富山県労働基準協会、建設業労働災害防止協会
3)報告の義務:アスベスト調査結果は、労働基準監督署に電子システムで報告しなければなりません。報告しなければならない建築物は一定規模以上のもののみとなっていますが、報告の義務違反の場合、30万円以下の罰金の罰則が科せられます。(大気汚染防止法第16条の11、第18条の15第6項、第35条第4項)
【補助金】
富山県内では事前調査のみに対する補助制度はいまのところ無いようです。
下記は、県内のアスベスト除去に対する補助の案内です。
・富山市民間建築物吹付けアスベスト除去等支援事業
・南砺市建築物アスベスト除去等支援事業